アライグマが日本に侵入した経緯と対策法を徹底解説
アライグマは、手を洗うような可愛らしい仕草で人気のある動物ですが、実は日本には元々生息していない外来種です。人間の手によって日本に持ち込まれた後、野生化してしまい、人間や自然に様々なトラブルを起こしています。
アライグマから身を守るためには、どんな動物なのか、どうやって日本に入ってきたのか、どんな被害があるのか、どうやって対策するのか、ということを知っておく必要があります。
この記事では、アライグマに関する基礎知識から対策法までを詳しく紹介します。
アライグマってどんな動物なの?
アライグマは英語で「raccoon」と呼ばれます。この名前はインディアンの言葉で「手で物を触るもの」という意味があるといわれています。
その名前通り、アライグマは手先が非常に発達しており、食べ物を探したり水に浸したり持ち運んだりすることが得意です。
ここでは、アライグマの見た目や生息地域についてご紹介します。
アライグマの特徴
アライグマは灰色から茶色の毛皮を持ち、目の周りに黒い模様があるほか、尾は長くふさふさしており、黒い縞模様がついています。
タヌキと間違えられることもありますが、タヌキと比べてアライグマは尾の縞模様が多く(4~10本)、足が白っぽく、耳に白い縁取りがあります。
また、アライグマはクマやネコと同じようにかかとまで地面につけて歩く蹠行性(しょこうせい)を持ちます。そのため、足跡は人間の子供の手のように長い5本指がはっきりと残るのが特徴です。
これはアライグマを他の動物と見分ける大きなポイントとなります。
以下の表は、アライグマ・タヌキ・日本アナグマとの見た目の違いをまとめたものです。参考にしてください。
動物 | 尾 | 足 | 耳 | 足跡 |
アライグマ | 黒い縞模様が4~10本ある | 白っぽい | 白い縁取りがある | 長い5本指がくっきり |
タヌキ | 黒い縞模様が3~4本ある | 黒い | 黒い縁取りがある | 短い5本指がぼやけている |
日本アナグマ | 黒い縞模様がない | 黒い | 黒い縁取りがない | 短い5本指がぼやけている |
アライグマの生息地域
アライグマはもともと北米から中米(カナダ南部からパナマ)まで広く分布している動物です。水辺や森林など様々な環境に適応できることから、現在の日本では北海道から沖縄までほぼ全国に分布しています。
野生化し始めたのは、1962年に愛知県の動物園から逃げ出した12頭が根本理由といわれています。しかしその後も、1970年代に放送されたアライグマが主役のアニメが話題となり、ペットとしての人気に火がつき、日本各地で飼育されるようになりました。
しかし、飼いきれなくなったり逃げ出したりしてしまったアライグマが野放しとなり、繁殖力の高さや適応力の強さで急速に広がってしまいました。
アライグマの繁殖と寿命
アライグマは1歳から2歳で成熟する生き物。2歳以上の妊娠率はほぼ100%といわれています。
繁殖期は地域によってことなりますが、日本のアライグマは1月~3月に交尾し、4月~6月に出産、7月頃から子供が巣を出て活動し始めるのが特徴です。
そんなアライグマの寿命は野生で約5年、飼育下では約10年前後といわれています。
アライグマはどのようにして日本に侵入したの?
アライグマは日本に元々住んでいた動物ではありません。では、なぜ日本国内にアライグマがいるのでしょうか。
その理由は人間のせいです。アライグマはペットや毛皮用として日本国内に持ち込まれましたが、その後自然に放たれたり逃げ出したりして野生化してしまったのです。
ここでは、アライグマが日本国内で野生化するまでの経緯と現在の分布状況について説明します。
アライグマの輸入と飼育ブーム
アライグマは日本に本来存在しない外来種であり、2005年に制定された外来生物法で特定外来生物に指定されています。つまり、許可なく輸入や販売、飼育することが禁止されている生物です。では、なぜアライグマが日本国内に来たのでしょうか。
原因の1つに、1970年代に日本国内で放送されたアライグマが主役のアニメがあります。このアニメの影響で、アライグマが日本国内に大量輸入されたのち、ペットとして飼われるようになりました。
しかしアライグマは気性が激しく、ペット向きではない動物です。飼育を断念したり手に負えなくなったりした人がアライグマを自然に放置してしまったことで、野生化したと考えられています。
また、飼育されていた日本国内の動物園から逃げ出したケースもありました。その際野放しになったアライグマが、人の手をかいくぐり野生化してしまったということもあるようです。
アライグマが日本で急速に広がった原因
日本で野放しとなったアライグマですが、なぜ人間や自然に被害を及ぼすほど増えてしまったのでしょうか。外来種であるアライグマが、ここまで増えてしまった原因はいくつかあります。
①天敵がいない
日本には、アライグマの天敵といわれているオオカミなどの大型肉食動物がほとんどいません。そのため、アライグマは捕食されることなく増え続けることができました。
②高い繁殖力をもっている
アライグマは一度に5頭ほどの子供を産む生き物です。天敵が少ないことも影響して、どんどん子孫を増やしていきました。
③雑食
アライグマという生き物は雑食性で、何でも食べます。山や森など日本には食べ物が豊富にあるため、繁殖するのに困らないという性質をもっています。
④生息できる場所がたくさんある
アライグマは適応力が高い動物で、平地や山間部、温暖地域、寒冷地域など、どこでも生きていくことができます。平地の少ない日本では隠れる場所が多いというのもあり、生存しやすい環境だといえるでしょう。
アライグマが日本で引き起こす問題
アライグマは日本に本来存在しない外来種であり、害獣として扱われています。なぜなら、アライグマは人間や自然に多くの被害を与えているからです。
ここでは、アライグマが日本で引き起こしている問題についてご紹介します。
①農作物や家畜への被害
アライグマは雑食性で、なんでも食べます。特に甘いものが好きなので、スイカやメロンなどの果物は大好物です。
そういった好みによるものから、アライグマは畑や果樹園などに入り込んで農作物を食べたり荒らしたりします。
また、鶏やウサギなどの家畜も襲われることがあり、アライグマが持つ鋭い牙と爪を使い、家畜の首や腹部を噛み切って殺してしまいます。
農家や養鶏場などでは、アライグマによる被害が深刻な問題となっています。
②建物や施設への被害
アライグマは知能が高く、人間の住む場所にも容易に侵入します。屋根裏や天井裏などを巣にして住み着くこともあるほか、巣作りのために、断熱材や電線などを引きちぎったり、壁や天井を穴だらけにしたりすることもあります。
また、神社や寺院などの歴史的建造物にも侵入し、屋根瓦や彫刻などを傷つけたりします。文化財を含む建造物への侵入・損壊は、歴史的・文化的価値の喪失につながります。
③病気や寄生虫の媒介
アライグマは多くの病気や寄生虫を持っており、人間やペットに感染させる可能性があります。たとえば、アライグマは狂犬病の発生源となることがあります。狂犬病は人間にも感染する重篤な感染症であり、発症するとほぼ100%死亡する危険性があります。
他にもジステンパーやインフルエンザ、日本脳炎やレプトスピラなどの感染症を始め、アライグマ糞線虫やアライグマ蛔虫などの寄生虫を媒介することがあります。人間だけでなくペットにも感染する危険があるため注意が必要です。
こういった病気や寄生虫は、アライグマに噛まれたり、アライグマの糞や尿に触れたり、アライグマの死骸や内臓に触れたりすることで感染する可能性があります。アライグマとの接触はなるべく避けることが重要です。
アライグマから身を守るための対策法
アライグマは日本に本来存在しない外来種であり、害獣として扱われています。しかし、アライグマを駆除することは一般市民には許されていません。
アライグマを駆除するには、以下の3つの方法がありますが、いずれも専門的な知識や技術が必要です。
- 捕獲器を使った駆除
- 毒餌を使った駆除
- 狩猟を使った駆除
上記の方法は、アライグマの根本的な数を減らす効果がありますが、完全に根絶することは難しいとされています。また、安全性や効率性に問題があることもあります。
そこで、一般市民ができる対策としては、アライグマの侵入を防ぐことが重要です。ここでは、アライグマの侵入を防ぐ方法とその効果についてご紹介します。
ゴミ箱や家屋の補強
アライグマは人間の生活に近い場所で餌を探すことが多く、ゴミ箱や家屋に侵入することがあります。そのため、ゴミ箱や家屋を補強することで、アライグマの侵入を未然に防ぐことができます。
まずはすぐにできる対策として、以下のような方法を検討してみてください。
- ゴミ箱には蓋をしっかりと閉めるか、ロックや重しをかける
- ゴミ箱を金属製やプラスチック製のものに変える
- ゴミ箱を室内や倉庫などに置く
- 家屋の窓やドアには鍵や施錠装置をつける
- 家屋の屋根裏や天井裏には金網や板などで塞ぐ
電気柵や防護ネットの設置
アライグマは畑や果樹園などに侵入して農作物を食べたり荒らしたりします。また、神社や寺院などの歴史的建造物にも侵入し、屋根瓦や彫刻などを傷つけたりします。
そのため、被害に遭いそうな場所に電気柵や防護ネットを設置することで、アライグマの侵入を防ぐことができます。
しかし、ゴミ箱や家屋の補強とはことなり、コストや手間がかかる点が欠点だといえます。
アライグマによる被害を防ぐためには
この記事では、アライグマの被害はなぜ起こるのか、日本に侵入した経緯と対策法を徹底解説しました。
アライグマは高い適応力と繁殖力をもち、人間や自然環境に多大な被害を与えています。アライグマの被害を防ぐためには、正しい知識と適切な対策が必要です。
アライグマに関してお困りの際は、駆除ザウルスにご相談ください。