北海道のアライグマ被害対策の効果的な方法|分布図や報奨金も解説
ここ数年、北海道では外来種のアライグマが増えています。アライグマは何でも食べる上に繁殖力が高いため、農作物や水産物、家畜飼料などを荒らす害獣として知られています。
さらに、レプトスピラ症やアライグマ回虫症などの感染症の媒介者になる恐れもあり非常に危険です。
この記事では、北海道におけるアライグマの被害状況や自治体が実施している対策をご紹介します。他にも、アライグマの分布状況や報奨金などについても解説しますので、北海道にお住まいでアライグマにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
北海道におけるアライグマの現状
北海道におけるアライグマの最初の野生化は、昭和54年(1979年)に恵庭市で飼い主から逃げ出した10頭ほどが酪農地帯に住み着いたことだとされています。
今では、道内のほとんどの場所でアライグマが発見されており、その頭数は数万頭と見積もられています。
アライグマの拡大に伴い、その損害も広がっています。平成5年度(1993年度)に最初に農業損害が記録されてから、損失額は高い水準で推移し、令和2年度(2020年度)には約1億2,000万円の損害を引き起こしました。
損害を受ける主な農作物はトウモロコシやメロン、スイカなどの果菜類が多いですが、配合飼料や牛などの畜産物、緑化木などにも損害があります。
さらに、アライグマは「野幌森林公園のアオサギの営巣地の消滅」や「シマフクロウの巣への接近」など、在来種の生息環境にも影響を与えています。
また、アライグマは住宅の屋根裏や物置、牛舎などにも棲みつき、住民や家畜に衛生的でない環境を作ることもあります。
北海道が実施するアライグマ対策
アライグマがもたらす被害に対処するべく、北海道においては「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に従ってアライグマの駆除を行ったり、市町村の担当者や駆除の実施者に対してアライグマに関する研修会を開催したりするなどのさまざまな対策を実施しています。
将来的には「アライグマを野外からの排除」という長期的な目標に向けて、総合的なアライグマ対策を推進しています。
北海道が進めるアライグマの防除
北海道では、外来生物法に従って道内で捕まえたアライグマの数や場所などのデータを集めています。蓄積したデータを基にアライグマの生息状況や密度を調べるとともに、アライグマの駆除に関する計画を立て、駆除の確認を行っています。
具体的には、アライグマの密度が高いと見られるエリアを優先対象として、令和2年度(2020年度)から捕獲の事業を実施。
優先エリアでは、市町村やハンター、農家などと協力し、効果的で効率的な捕獲をめざしています。
さらに、道内の市町村でも、農産物や家庭での野菜の被害を守るために、駆除の計画を立てて捕獲活動を進めています。
アライグマの駆除に向けたプログラムの作成
北海道と地方独立行政法人北海道総合研究機構は、市町村などの捕獲の担当者が効果的で効率的な捕獲を行うための支援ツールとして、令和4年度(2021年度)に「北海道アライグマ捕獲プログラム」を作りました。
同プログラムは、技術マニュアルだけでなく、捕獲の手順、目標の決め方、そして課題の把握と改善策などを含んだ、捕獲に関する包括的なプログラムです。市町村などの捕獲の計画や実行、評価に活用することを目的としています。
アライグマの捕獲状況をマップで見られるサイトを開設
北海道では、市町村や関係団体から受け取ったアライグマの捕獲や駆除などの情報を、地図上にわかりやすく表示した「北海道アライグマ捕獲等情報マップ」を公開中です。
このマップは、アライグマの問題に取り組む方々にとって、効率的な駆除方法を探るためのツールといえます。
マップは以下の4種類が公開されており、項目別に最新の被害状況を目視できます。
- 捕獲数マップ
- 生息密度指標マップ
- 農業被害額マップ
- メス・幼獣捕獲マップ
参考:北海道「北海道アライグマ捕獲等情報マップ」
捕獲数マップ
アライグマの捕獲数を色で区別したマップです。捕獲数が多いところほど、赤色に近づきます。捕獲数は、その地域のおおよそのアライグマの数の目安となりますが、捕獲活動の強度によって、数値が大きくなるという傾向もあります。
生息密度指標マップ
アライグマの生息密度の目安であるCPUE(Capture per unit effort:単位努力量あたりの捕獲数)を色で区別したマップです。
CPUEは、捕獲数を捕獲努力量で除した数値で、捕獲努力量とは、捕獲器具を設置した日数のことです。CPUEが高いところほど、青色に近づきます。捕獲活動に必要な労力やコストを加味した、アライグマの生息密度の見積もりとなります。
農業被害額マップ
アライグマによる農業被害額を色で区別したマップです。農業被害額が高いところほど、黄色に近づきます。農業被害額も、おおよそのアライグマの数の目安として活用できます。
メス・幼獣捕獲マップ
アライグマのメスや幼獣の捕獲数を記号で示したマップです。メスや幼獣の捕獲情報があるところは、将来的に生息数が増える可能性のあるところです。
捕獲するときは性別や成獣・幼獣の区別をチェックし、メスと幼獣が捕獲されたら、その周辺での捕獲を優先して行いましょう。
アライグマに関する研修会の実施
北海道では、市町村の担当者や防除の実施者などを対象に、アライグマに関する研修会を毎年行っています。
研修会では、アライグマの特徴や影響、防除の手段やポイント、外来生物法の内容などについて専門家の講話を聞くとともに、実際にアライグマの捕獲用具の使い方や置き方などの実習をしています。
アライグマの駆除に報奨金が出る?北海道の報奨金制度について
北海道のなかには、アライグマの駆除に際し「捕獲奨励金」を支給する自治体があります。ここでは、北海道のアライグマ報奨金制度の概要や対象者、諸条件などをご紹介します。
アライグマに関する報奨金制度
北海道では、外来生物法という法律に基づいてアライグマの捕獲活動を行っています。しかし、アライグマの個体数や生息範囲は高いままで、生態系や農業などに悪影響を及ぼしています。
そこで、道内の一部自治体ではアライグマの捕獲に関して報奨金を支給しています。道内全ての自治体が報奨金を支給しているわけではないので、ご注意ください。
実施地区 | 報奨金支給額 | 支給要件 |
北海道深川市 | 1頭につき2,000~3,000円(予算の範囲内) | ● 鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可を得ること ● 外来生物法に基づく防除従事者登録をすること ● 捕獲個体を深川市有害鳥獣処理施設に運搬し、適切に処分すること |
北海道雨竜町 | 1頭につき1,000円(箱罠による捕獲の場合) | ● 町内に住所を有すること ● 町の有害鳥獣捕獲許可を受けていること ● 町の防除従事者であること ● 捕獲用の箱罠であること ● 地方税等の滞納がないこと |
北海道沼田町 | 1頭につき1,000円(罠猟による駆除を実施した場合) | ● 銃器所持の当該年度に狩猟免許(第1種及びわな猟の両方)を取得すること ● 猟友会に入会すること ● 有害駆除や狩猟を年間30日以上実施すること ● 委員会で実施する研修会に1回以上参加すること ● 銃器所持から3年以上の有害駆除や狩猟に従事すること
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北海道日高町 | 1頭当たり2,000円 | ● 日高町有害鳥獣駆除奨励金等交付申請書(第1号様式)を町長に提出しなければならない ● あらかじめ有害鳥獣駆除等委嘱ハンター育成事業認定申請書(第2号様式)を町長に提出し、認定を受けなければならない |
北海道小平町 | 1頭につき2,000円 | ● 令和6年4月1日から令和6年6月30日までの間に小平町内において駆除し、ごみ処理施設へ運搬したアライグマ ● 外来生物法に基づく防除従事者証を持っていること ● 小平町民であること |
北海道豊頃町 | 1頭につき2,000円以内 | ● 有害鳥獣捕獲報告書により、町長に報告しなければならない |
北海道新冠町 | 1頭につき4,000円 | ● 特定外来生物の防除実施計画による捕獲従事者が捕獲すること |
北海道のアライグマに関する注意事項
アライグマを駆除をするときには、気をつけなければならないことがあります。ここでは、アライグマの駆除に際しおさえておきたい注意点をご紹介します。
アライグマを捕まえるには狩猟免許が必要
罠や毒餌でアライグマを捕まえたり殺したりしようと思う方もいるでしょうが、それはNGです。というのも、アライグマなどの害獣は鳥獣保護法で保護されているので、許可なしに捕まえることは違法となります。
オスだけは狩猟期間中に自治体から許可をもらって捕まえることができますが、狩猟免許を持つ人が、正しい方法で駆除をしなければなりません。
発見しても近寄らないこと
見た目がかわいいという理由から思わず近寄りたくなるかもしれませんが、それはとても危険です。アライグマは臆病な性格の持ち主ではありますが、刺激を与えると暴力的で攻撃的な動物に変貌します。
無闇に近寄ると、自分より大きな人間を敵とみなし、噛みついたり引っ掻いたりしてくる可能性があります。アライグマにかまれると、傷だけでなく感染症やウイルスにかかることもあるため、見つけても近寄らないようにしましょう。