日本のコウモリは危険性が高い?噛まれた・触ったらどうなるのか解説
コウモリは、人間にとって危険性の高い病原体を持っている野生動物です。コウモリのフンや唾液、血液などに含まれる病原菌が人間に感染すると、重篤な症状を引き起こすことがあります。
この記事では、日本のコウモリが媒介する危険性の高い感染症を始め、噛まれたり触ってしまった時の対処法について解説します。
コウモリに関する不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
日本のコウモリが媒介する危険性の高いウイルス・感染症
コウモリはさまざまな病原菌や寄生虫を媒介することで知られており、人に感染するものを「人獣共通感染症」と呼びます。野生動物だけでなく、ペットや家畜も人獣共通感染症の原因となり得るため、予防のためにも把握しておくことが大切です。
ここでは、日本のコウモリが媒介する危険性の高いウイルスについて解説します。
感染症名 | 主な症状 | 治療法 |
リッサウイルス | 発熱、食欲不振、倦怠感 | 対症療法、抗ウイルス薬の可能性あり |
レプトスピラ | 発熱、頭痛、筋肉痛 | 抗生物質治療 |
サルモネラ | 腹痛、下痢 | 対症療法 |
ヒストプラスマ | 咳、呼吸困難、発熱 | 抗真菌薬、対症療法 |
ニパウイルス | 発熱、頭痛、嘔吐 | 対症療法 |
アルボウイルス | 発熱、髄膜炎、脳炎 | 対症療法 |
リッサウイルス感染症
リッサウイルス感染症とは、ラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスが原因で起こる感染症です。アフリカやヨーロッパ、オーストラリアなどの地域に住むオオコウモリや小型コウモリに潜んでいます。
初期段階の症状としては、以下の通り狂犬病と似た症状が現れます。
- 発熱
- 食欲不振
- 倦怠感
- 感染した(噛まれた)部位の痛みやかゆみ
- 喉の痛み
- 感覚の過敏 など
症状が進行すると、興奮や嚥下障害、発声障害、筋肉のけいれんなどが起こります。さらに、水を見ると恐怖を感じる恐水症や、精神が乱れるなどの重篤な中枢神経症状が出現します。
日本においては、感染症の発生やコウモリからのウイルス検出といった事例報告はありませんが、油断はできません。
レプトスピラ症
レプトスピラ症とは、牛や馬、豚などの家畜や、犬や猫などのペット、そしてげっ歯類などの野生動物が保菌する「レプトスピラ」という細菌によって引き起こされる感染症です。
レプトスピラは、保菌動物の尿に含まれており、その尿で汚染された水や土壌、あるいは尿そのものに触れることで皮膚から感染したり、汚染された水や食べ物を摂取することで口から感染したりします。
レプトスピラ症の宿主となる動物のなかには、オオコウモリもいます。オオコウモリは自然界でレプトスピラ症を持ち込んだと考えられており、洞窟などでオオコウモリのフンに触れたり、吸い込んだりすることで感染する可能性があります。
レプトスピラ症は全国で発生しており、2016年1月から2022年10月までに、29都道府県で273人が報告されました。そのうち、国内で感染したと思われるのは257人(94%)でした。
参考:NIID 国立感染症研究所「レプトスピラ症の発生状況」
サルモネラ感染症
サルモネラ感染症は、人と動物の両方に感染する可能性がある微生物です。コウモリの遺体やフンにサルモネラ菌が含まれていることが多く、菌が増殖している時に危険が高まります。
お腹が痛くなったり、下痢をしたりする熱性疾患として扱われており、熱が高くなることもあります。コウモリを含む動物の死骸やフンには触れないことが大切です。
ヒストプラスマ症
ヒストプラスマ症とは、ヒストプラスマ属菌というコウモリや鳥のフンに多く存在する菌を吸い込むことで発症する肺感染症です。コウモリが住む洞窟や鉱山などに入ったり、鳥のフンが混ざった土をかき回したりするときに危険性が高まります。
さらに、空気中に菌の胞子が散らばるような作業(鳥やコウモリの生息地での建設作業、樹木の切り倒しや建物の解体など)をするときも、感染の可能性が高くなります。
ヒストプラスマ症の主な症状は肺炎で、高熱や咳、呼吸困難を引き起こすこともあります。症状が出ない場合や軽度なケースがほとんどですが、重症化するヒストプラスマ症のリスク要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間にわたって大量の菌に曝露すること
- 年齢が55歳以上であること
- 幼児であること
- T細胞の免疫機能が低下していること(例えば、HIV/AIDS患者や臓器移植患者、コルチコステロイドや腫瘍壊死因子阻害薬などの免疫抑制薬を服用している患者など)
参考:NIID 国立感染症研究所「ヒストプラスマ症とは」
ニパウイルス感染症
ニパウイルス感染症は、コウモリが媒介する人獣共通感染症で、感染動物やその体液、排出物で汚れた食品を摂取することでヒトに感染します。さらに、感染者との密な接触によってヒトからヒトへの直接感染も起こり得ますが、これは一般的ではない感染経路です。
ニパウイルス感染症は、密な接触によってヒトからヒトへの直接感染も起こり得ますが、日本ではこれまで直接的な被害は報告されていません。
潜伏期間は4日から14日とされていますが、報告によっては潜伏期間が45日に及ぶものもあります。
ニパウイルス感染症に特化した治療法は存在せず、症状に応じた治療が行われます。抗ウイルス薬のリバビリンが使用される場合もありますが、その効果については確かな評価がなされていないため、細心の注意を払って経過観察が必要です。
参考:NIID 国立感染症研究所「ニパウイルス感染症とは」
アルボウイルス感染症
アルボウイルスという名前は、「節足動物が媒介するウイルス」という英語の頭文字を取ってつけられました。
1つのウイルスではなく、人や動物に感染する多様な系統のウイルス250種以上の総称です。その中には、人に病気を起こす80種類以上のアルボウイルスが含まれます。
海外では、コウモリが保有する「ベネズエラ脳炎」という病気の原因ウイルスがアルボウイルスの一種として同定されています。
アルボウイルス感染症にかかっても無症状の場合もありますが、発熱・髄膜炎・脳炎・急性弛緩性麻痺などの神経系の症状が現れる場合もあります。
日本のコウモリに噛まれたら危険性大!噛まれたときの対処法
コウモリに噛まれた可能性がある場合、最初にするべきことは噛まれた箇所を清潔な水と石鹸で洗うことです。その際、傷口を擦ったりせずにやさしく丁寧に洗ってください。洗う時間は15分くらいが目安です。
次に、着ていた服をすぐに洗濯し、身体に他に噛まれた跡がないか見てください。噛まれた跡があれば、同じように水と石鹸で洗います。
そして、傷の深さや大きさにかかわらず、その日のうちに病院に行くことが大切です。軽い傷なら皮膚科、重い傷なら外科がある病院を選んでください。
「コウモリにぶつかっただけかも」と思っても、後で調べてみると実は噛まれていたということがよくあります。噛まれた痕が見当たらなくても、コウモリとの接触に不安があるなら、安全のために病院に行っておくといいでしょう。
噛まれた部分が動かなくなったり、血が止まらなかったりする場合は、さらに急いで病院に行く必要があります。傷口が赤く腫れたり熱を持ったりする場合も、早急な治療が必要です。
コウモリに噛まれると狂犬病に感染する可能性がある
狂犬病は、世界中で毎年約5万5,000人が命を落としている重大な感染症です。コウモリやイヌ、ネコなどの野生動物が持つウイルスによって引き起こされます。
狂犬病はインドや中国などで多く発生していますが、アフリカやヨーロッパ、北米や中南米などでも見られます。
日本では1957年以降、国内での発症は確認されていませんが、1970年と2006年には、それぞれネパールとフィリピンでイヌにかまれた帰国者が狂犬病で亡くなったケースがありました。
日本のコウモリに触るのは危険性が高い?触ってしまったときの対処法
コウモリはさまざまな病原体を持っている可能性があり、人に感染させる危険性があります。特に赤ちゃんや幼児、小さいお子さんがいる家庭では、コウモリやフンに触れないように気をつけなければなりません。
もし、お子さんがコウモリやフンに触れてしまったら、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、コウモリに触ってしまった時の対処法について紹介します。
手を洗って消毒する
コウモリやコウモリのフンは、レプトスピラやサルモネラなどの感染症の原因となる可能性があります。
お子さんがコウモリのフンに触れてしまったら、すぐに接触した部位を石鹸でよく洗いましょう。さらにアルコール消毒も忘れずに行ってください。コウモリに触れた手で、鼻や口などの粘膜や、怪我をしている傷口に触ると、感染症のリスクが高まります。
もし、そのようなことがあった場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
着衣にも気をつけよう
お子さんがコウモリに手を出してしまったら、着ていた服にもフンや血液などが付いているかもしれません。
フンなどが目に見えて汚れている場合は、できればその服は捨ててしまうのが無難です。洗うとしても、他の洗濯物とは別にして、漂白剤を使って洗浄しましょう。
日本でコウモリの被害に悩んでいるなら害獣駆除業者にご依頼を
コウモリは、人間にとって危険な病原体を持っている野生動物です。コウモリから病原菌が人間に感染すると重篤な病気になる恐れがあるため、正しい方法で予防や対処をすることが大切です。
自分で忌避剤を使って対策することもできますが、安全に確実にコウモリを駆除したいなら、プロの駆除業者にお願いすることをおすすめします。
駆除ザウルスでは、無料で現場の調査を行っております。「コウモリが家に入ってきて、どう対処すればいいかわからない…」という方は、お気軽にご連絡ください。